「残った天ぷら油で飛行機飛ばします」。
突飛なアイキャッチ画像から失礼しました。
今回は、航空燃料に関わる「SAF」というキーワードを取りあげていきます。
この記事を読むことで、「SAF」の意味やその原材料、各国の航空業界の取組、今後の課題、企業の取組例、更には天ぷら油の真相は何なのかというところまで理解することができます。
ぜひ一緒に学んでいきましょう!
目次
↓こちらの動画でもわかりやすく解説しています
YouTube:次世代の航空燃料『SAF(サフ)』について解説します!
SAFの意味、原材料について
SAFとは、持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel)の頭文字です。
従来のジェット燃料は原油から精製されます。
それも対して、SAFは、廃食油、サトウキビなどのバイオマス燃料や、都市ごみ、廃プラスチックを用いて生産されます。
SAFを使用するメリットとは? 航空分野で嬉しいCO₂削減効果
廃棄物や再生エネルギーが原料のため、ジェット燃料と比較して約60~80%のCO2削減効果があると言われています。
航空機は、大きなエネルギーを必要とすることに加え、設計上大容量のバッテリーを搭載して飛ぶことが難しいため、自動車のように電動化するのが難しい乗り物です。
したがって、航空分野では、航空燃料のSAFへの転換がCO2削減に最も効果が高い手段とされており、2050年のカーボンニュートラルに向けては、SAFの利用が必要不可欠です。
そもそも国内航空分野におけるCO2の排出量は、運輸部門の中でも5%前後と決して高くはないかもしれませんが、国際民間航空機関(ICAO)という国際的な機関によって、2050年までに国際航空分野で二酸化炭素の排出を実質ゼロにするという長期目標が採択されており、日本としてもこれに貢献することが求められています。
特に航空業界は、国際的な移動や物流を支える側面が強く、今後も航空機の需要は高まっていくことが想定されるので、国際的な目標への貢献は非常に大切です。
【参照:関西におけるカーボンニュートラル実現に向けた新たなエネルギーの動き|近畿経済産業局】
SAFの使用量について、その具体目標とは?
次に、SAFの使用量のついての具体的な数値目標について紹介します。
政府は、2030年時点のSAF使⽤量として「本邦エアラインによる燃料使⽤量の10%をSAFに置き換える」という目標を設定しております。
この目標の達成に向けて、SAFの導入を加速させるための技術的・経済的な課題を官民で議論・共有し、⼀体となって取組を進める場として、経済産業省と国土交通省とが共同で「SAF官民協議会」を設立しました。
JAL、ANAの2大航空会社もこの官民協議会へ参画してくださっています。
諸外国におけるSAF導入に向けた動き
日本の航空会社による燃料使用量の10%をSAFに置き換えることは、挑戦的な目標のように感じますよね。
しかし、他の国に目を向けると、SAF導入への機運がより高まっていることが分かります。
<EU>
EUの成長戦略であるグリーンディール政策の中で…○航空燃料供給者に、EU域内で供給する航空燃料に対して⼀定⽐率以上のSAF・合成燃料の混合を義務づけ。
○ 航空会社に対しては、域内空港でのSAFの給油を義務づけ予定。○EU域内の各国も、独⾃のSAFの供給義務・⽬標を設定。●フランスの航空会社のエールフランスでは2022年からフランス・オランダ発のすべての便でSAFが導入。
●エアバスとSAFを製造するフィンランドのネステは、100%SAFを使用した旅客機の運航の実証を進めている。
<イギリス>
○日本と同様、2030年までに航空燃料の10%をSAFに置き換える⽬標を設定。
○燃料供給事業者に対するSAFの供給義務を2025年に導⼊予定。
<アメリカ>
○2050年までに、航空部門で使用される燃料を全てSAFに置き換える目標。
―この目標を達成するため、アメリカ国内ではSAFの生産量拡大を進めており、SAFの生産・利用に携わる企業への資金援助や、技術開発が盛んに行われている。
●世界的にも大きなシェアを誇るアメリカのユナイテッド航空では、SAFの使用拡大を目指し、2021年4月に「エコ・スカイズ・アライアンス・プログラム」が開始。
―このプログラムはユナイテッド航空とグローバル企業がSAFの購入・利用拡大のための投資を行うもので、現在20社以上の企業が参画している。
また、ユナイテッド航空では2021年12月に、片側エンジンにSAFを100%搭載した機体でのフライトを成功させるなど、SAFを使用したフライトについての実証も確実に進めている。
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こうして見ると、世界の航空事業者が、SAF導入に向けて、一斉に積極的な取り組みをしていることがわかりますね。
SAFの課題は?足りぬ製造量
しかし、SAFは、その目標に見合った形で安定して供給していけるものなのかどうか、という点が気になりますよね。
現在、SAFの原料となるのは、主に植物などのバイオマス由来原料や、飲食店や生活の中で排出される廃棄物・廃食油などです。
これらの原料をジェット燃料として使用するためには十分な量の確保が必要です。
そのため、現在は、安定的に原料を集め、製造を行う仕組みづくりが課題となっています。
残念ながら現在の日本では、SAFの需要に対して、製造量が追いついていないのが現状です。
日本では現状SAFの調達を輸入に頼っている状態ですが、SAFを必要としているのは世界各国共通であり、輸入に頼ることは、今後のSAFの利用拡大について、持続可能な手段とは言い難いです。
SAF国内調達に向け、一歩前進 スタートアップ企業の取組み例
しかし、SAFの調達を輸入に頼っている現状に、一石を投じようという企業もあります。
経済産業省が推進するスタートアップ企業の育成支援プログラム「J-Startup」にも選定されている「ユーグレナ」という会社です。
ユーグレナが研究・開発に取り組むのは、「サステオ」というバイオ燃料です。
「サステオ」、使用済みの食用油と微細藻類ユーグレナ(またの名をミドリムシ)から抽出されるユーグレナ油脂を原料に製造されるバイオ燃料なのです。
これはSAFの国際規格にも適合しており、既に供給が開始されている国産バイオジェット燃料として、今注目を集めています。
そして、実はユーグレナ社長の出雲さんという方は、私が学生団体で活動していた際にもゲストとしてお越しいただいた、同志・先輩であり、大変応援と期待をしています。
国内でSAFを安定的に調達し、従来の燃料から置き換えていくためには、国産SAFの製造と流通網の整備がかかせません。
ユーグレナに代表されるような、バイオテック領域でイノベーションを牽引していくスタートアップ企業の活躍からは今後も目が離せませんね!
関連リンク
YouTube:次世代の航空燃料『SAF(サフ)』について解説します!
2023-08-01ブログ「【e-fuel】合成燃料を徹底解説!日本の未来を拓く合成燃料とは!?」
2023-05-22ブログ「合成燃料で既存の自動車産業を守ります!」
2021-10-06ブログ「【脱炭素 × 林業】 木材を活用したバイオマス発電とは?」
「持続可能な航空燃料(SAF)の
導⼊促進に向けた施策の⽅向性について(中間取りまとめ(案))」|経済産業省