平成26年には、世界で初めてiPS細胞を用いた移植手術が行われるなど、着実に成果を上げている再生医療。
一度失われた機能を取り戻すことができるかもしれない、まさに夢のような医療技術ですよね。
その実用化にあたって様々な問題もありますが、国としても、安全性を確保したうえで皆さまに利用いただけるように推進しております。
今回は、国会議員として国政を担う一方で、医師でもある特殊な私の立場から、再生医療について、簡単に・分かりやすく解説していきます。
ぜひ一緒に学んでいきましょう!
↓こちらの動画でもわかりやすく解説しています
YouTube:再生医療の現状と課題 とは? 衆議院議員で医師でもある今枝宗一郎が解説します!【医師の解説】
再生医療とは?イメージは“トカゲのしっぽ”
再生医療とは、病気や事故などの理由によって失われたからだの組織を再生することを目指して提案された医療技術です。
例えて言うなら、トカゲの尻尾のイメージでしょうか。
トカゲの尻尾は切れてもまた、生えてきますよね。
あれは、トカゲの尻尾の細胞が再生する力を持っているからです。
再生医療では、そのような細胞に働きかけて、人間の臓器や失われた身体の部位を再生させることを目的としています。
再生医療の2つの種類について
再生医療には、いくつかの方法があります。
まず有名なのは、多能性幹細胞治療です。
特別な細胞である「幹細胞」を使って、体の損傷した部分を修復します。
多能性幹細胞は、私たちのからだの細胞であれば、どのような細胞でも作り出すことのできる細胞で、
必要な組織や臓器を作ることができます。
2012年に山中教授がノーベル賞を受賞したことで有名になった、「iPS細胞」も、この新しい幹細胞の一つで、
再生医療を実現するために重要な役割を果たすと期待されています。
他にも「ES細胞」など、受精卵を培養して作られる細胞もあります。
次に体性幹細胞を使った方法です。
体性幹細胞とは、⼀定の限定された種類の細胞になることができる幹細胞です。
体性幹細胞の持つ多分化能は限定されていますが、分化能⼒が限定されているがゆえに、細胞治療で⼼配されるガン化の可能性が低いため、
以前から治療に利⽤されてきています。
このように再生医療の技術は徐々に確立されつつあるのです。
再生医療の問題点とは?
しかし、自分の細胞が体の外で培養されて、それをまた戻されると考えると、怖いような気もしますよね。
実際に、再生医療においては、先進的な医療技術である分、安全性や有効性が証明されていない面は少なくありません。
また、大変高額な幹細胞治療などが、自由診療として患者に提供されるケースもあり、
それに伴う合併症・有害事象の発生、訴訟などの事例が散見される問題もあります。
さらには、ES細胞などを用いた研究は、人の受精卵を培養することが前提ですので、
人が人工的に赤ちゃんを作る可能性が出てくるなど、倫理的な問題も関係してきます。
このあたりは以前解説した、「ゲノム医療」とも関連してくる話ですね。
経済・新産業面からみる再生医療
実は、この再生医療、医療面からだけでなく、経済・新産業という面でも大きく注目されています。
それはなぜでしょうか?
再生医療を進めるためには、細胞の培養が必要になりますよね。
そして、「培養」も1つの産業であり、新しい技術や機械の開発、それに対する投資などが必要で、多くの人が関わるものです。
実際、日本国内の企業にも、培養を専門とする企業やスタートアップが出てきています。
つまり、今後、関連する新しい産業や、雇用に繋がっていく可能性があるのです。
私も医師の一人として、再生医療の技術に関心を寄せておりますが、医療技術の向上に、スタートアップ企業の取組は欠かせません。
引き続き、注目していければと思います。
再生医療に対する国の取組とは。
また、再生医療は、これまでの医療機器や医薬品とは異なり、ヒトの細胞を培養するため、行政としても、その新しい技術に対する承認のあり方を検討する必要があります。
そこで、国としては、条件付き早期承認という、新しい医療技術に対する承認制度を、新しい法律をつくることで進めています。
新しい技術に対する取組ですから、政治や政策側も、新しい承認方法を模索し、安全性の確立を図っています。
そして、最終的には皆さまにも新しい医療を利用していただけるよう、政治と民間が深く関わって推進してきました。
今後も、研究者の方々、そして私たち政治・政策、実際に医療機関で医療技術を扱う医療関係者と、患者様方、そして国民の皆さまが、同じ方向を向いて、再生医療を正しく的確に理解し、考えていくことが大切だと考えております。
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